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2019年11月定例会本会議 

まちづくり

広域的交通マネジメント

○議長(清沢英男 君)次に、百瀬智之議員。

      〔13番百瀬智之君登壇〕

◆13番(百瀬智之 君)私は、4年前に県議会に来て最初の一般質問で扱ったテーマが地域公共交通だったのですが、その時にお尋ねしたのは、主に2点、地域公共交通活性化再生法に基づく地域公共交通網形成計画と、都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画の件でした。交通まちづくりの車の両輪とも言われるその二つの計画について、今回はその後をお尋ねいたします。

 初めに、地域公共交通網形成計画について、2014年の法改正以降、県内でも多数の市町村が策定に至り、中には見直しの時期を迎える自治体も出てきています。計画の策定にどのようにかかわっていくかという当時の質問に、「県といたしましては、広域的な交通ネットワークとの整合性や専門的な知識、事例等を提供することで、各市町村における取り組みを支援、後押ししてまいりたいと考えております。」と答弁をいただきました。

 改めて、現在計画の策定に至っている市町村はどれほどに上り、この4年間でいかなる支援、後押しをしてきたのか。策定に至っていない自治体をどう見ているかについてまず見解をいただきます。

 また、現在、県の取り組みとして、計画の推進にどのようなメニューを用意し、特に今年度始まった地域公共交通最適化サポート事業はこれらにいかに寄与するのかお尋ねいたします。

 さらに、各議員の一般質問でも、交通系ICカードの導入に関する質問は、過去、多かったように感じます。十数年前から都市圏では至る場面で当たり前に利用されているICカードを、こちらでは一体いつになったら生活の一部により組み込めるようになるのかという疑問はいまだ根強く、改めて交通系ICカードの普及時期について伺うとともに、ICTを活用しながら出発地から目的地までの移動を一つのサービスとして、すなわち検索、予約、決済までのサービス提供をスマートフォン一つで享受できるMobility as a Service、通称MaaSと呼ばれる取り組みについて導入に県内ではどのような見通しを持っているか。以上、企画振興部長にお尋ねします。

 次に、立地適正化計画についてお尋ねします。

 平成26年の都市再生特別措置法の一部改正に伴い、公共交通を充実させるとともに、歩いて暮らせるコンパクトなまちづくりへの方向性が示されました。この法律改正により、市町村が都市機能を集約化する区域と居住を促進させる区域を立地適正化計画として定めることができるようになり、県内でも策定の動きが続いてきましたが、市町村間の連携や災害対応など広域的な課題に県は積極的にかかわっていただけたでしょうか。

 例えば、一つには、松本市の南の玄関口、村井駅周辺は松本市の立地適正化計画で都市機能誘導区域に設定されています。村井駅は明治35年に開業し、市内では松本駅に次いで2番目の乗降客数を誇ります。周辺の開発は進み、近年では駅南側に松本国際高等学校が建設され、東側ではまつもと医療センターが開設、現在駅舎の改築プロジェクトが進行中で、周辺のにぎわい創出にさらに期待がかかっています。

 一方で、村井駅から南側に200メートルも歩けば塩尻市となるため、塩尻市民も多数村井駅や周辺を利用し、生活圏としては松本市の南限と塩尻市の北限は一体を構成しているのですが、村井駅周辺の都市機能誘導区域は市の境でばっさりと切られたような区域図となっています。塩尻市の北限は同区域に設定されていないため、これで本当に効果的な都市機能が集積されていくのかと率直に感じます。

 また、もう1点、災害の観点から、今回の台風19号災害において、自治体が設定した居住誘導区域内に浸水被害が発生しました。長野市が2017年に策定した立地適正化計画においては、設定した居住誘導区域のうち、豊野、松代、篠ノ井などの一部エリアが浸水。千曲市は、しなの鉄道屋代駅周辺や戸倉上山田温泉地区などを居住誘導区域に設定し、この一部が床上浸水。佐久市でも、JR小海線の駅周辺の市街地を居住誘導区域に設定したものの、千曲川沿いの店舗などが川へ流出する被害が出ました。

 とりわけ、今年2月の本会議一般質問において、河川氾濫による家屋倒壊等が想定される地域住民に対して都市計画を活用した居住誘導策を講じるべき旨を述べた際、答弁では、立地適正化計画の運用指針では、災害のリスク等を総合的に勘案し、居住を誘導することが適当でないと判断される区域は原則として誘導区域には含めないことを指摘された上で、「ハザードマップ等も考慮し、適切な居住誘導が図られるように技術的助言を行ってまいります。」といただいております。今回の事案に何らかの対応はあったのでしょうか。

 以上を踏まえ、これらの問題に県としてどのように対応してきたのか。また、改めて県と関係市町村が広域的に課題を共有できる場を設ける必要があるのではないか。建設部長の見解を求めます。

 さて、交通というと、東京など人口規模が大きい地域と県内をどのように結ぶかということにはよく注目が集まりますが、地域の内部でどのような人の流れをつくり、都市計画等を活用してそれを町の活力にどう結びつけていくかということについての議論は大変薄弱であったと思います。さきに摘示した法律や計画を推進しても、人口減少社会へのある程度の対応にこそなれ、町や地域の活力をどこまで創出することができるか、現実的には厳しい面があることは否めません。民間事業者や行政、地域などが今は知恵を出し合って、うまく役割分担しながら地域交通を担っていますが、どこも運営資金に窮し、人手も足りない中で、このままの制度下で存続できるのか、不安は尽きないわけです。

 そこで、長期的な展望を考えたとき、2月の本会議では、地域振興局のさらなる権限強化、あるいは統合再編をと述べました。交通の事案にもそのような観点からしっかり地域振興局がかかわっていただきたいと思いますし、また、今般、国のほうでは圏域構想が議論されています。これまで、市町村の枠組みを超えた広域連携は、ごみ処理の事務組合など緩やかな形で幅広く行われていましたが、これに対し、政府内で浮上する圏域は、新たな行政単位という位置づけで、今年6月に閣議決定した骨太方針でも、一定の人口を有する圏域を形成し、医療、交通、産業などの分野における近隣市町村の連携を促進すると明記されています。これが実現すれば、複数の近隣市町村が、権限、財源、人材を一体的かつ合理的に運用しながら交通政策を展開することに期待がかかります。地域振興局にしろ、圏域構想にしろ、ひとまず、形はどうであれ、今後は構造的に広域的なマネジメントを強めていかなければ、人の流れという地域の活力に直結する問題においていつまでも積極策を打つことができないのではと危惧いたします。権限、財源、人材のそれぞれが縮小し続ける各市町村の交通政策を県として広域的にどのように捉えているのか。知事の所見を伺い、今回の一切の質問といたします。ありがとうございました。

      〔企画振興部長伊藤一紀君登壇〕

◎企画振興部長(伊藤一紀 君)交通まちづくりについて大きく3点質問をいただきました。

 まず一つ目の市町村の地域公共交通網形成計画の策定状況と県の対応等についてということですけれども、現在31の市町村が計画を策定済み、今後四つの市町が策定予定としております。

 県では、これまで、広域的な公共交通ネットワークとの整合を図る観点から、市町村の公共交通活性化協議会等に参画いたしまして、計画策定について必要な助言、情報提供を行ってまいりました。

 議員御指摘のように、この計画は、公共交通の目指す方向性等についてまちづくりとセットで定めますマスタープランと位置づけられておりますことから、大変重要なものと認識をしております。

 現在、国におきましては、計画策定を努力義務化する法改正というものも検討されているとお聞きしております。こうしたことも踏まえまして、北陸信越運輸局と連携を図りながら、引き続き市町村の計画策定が進むよう支援をしてまいります。

 二つ目です。市町村の計画策定の推進にかかわります県のメニューについてということですけれども、県では、平成28年度から、地域交通ベストミックス構築事業というものを実施してまいりました。ここでは、調査費用ですとか実証運行等に係る経費に対し助成するとともに、交通アドバイザーを派遣するということをやってまいりました。この事業で支援しました28市町村のうち、20市町村が計画策定の準備や計画に基づく路線再編等に取り組んでいるところであります。

 この計画のポイントの一つとして、地域全体を見渡した総合的な公共交通ネットワークの形成ということがございますので、今年度から南信州、木曽、北信の3地域で実施しております地域公共交通最適化サポート事業におきましては、そのエリアの人口動態や生活圏を意識しまして、病院、学校といった生活拠点から交通の状況などの基礎データを収集、整理して、課題解決のためのいわゆる処方箋を示しますカルテを作成することとしております。このカルテを各地域において公共交通の最適化に活用することが計画策定の推進に資するものと考えておりますので、このサポート事業を全県展開してまいりたいと考えております。

 最後に、三つ目です。交通系ICカードの普及時期とMaaS導入の見通しについてですけれども、交通系ICカードにつきましては、交通事業者や自治体、それから学識経験者等で構成します検討会におきまして、JR東日本が2021年春の提供を目指しております地域連携ICカードを軸として導入することで今検討が進められているところです。

 まだ多くの課題がありますけれども、導入の主体であります事業者の多くが、やはりコストの面で課題があるとしておりますことから、こういった課題をクリアした事業者、地域から順次導入が進められていくものと考えております。

 MaaSにつきましては、今年度、国が実証実験として全国19カ所でモデル事業を支援しております。残念ながら本県では国のモデル事業を行われておりませんが、県が独自に開発しました観光・交通案内アプリ「信州ナビ」におきましては、鉄道、バスの経路検索や時刻表などの情報、それからタクシー、レンタサイクルを予約できるアプリの情報など、MaaSの取り組みの推進に資すると考えられる情報の提供を行っているところです。この信州ナビの機能の充実、利用促進を図るとともに、国の実証実験の結果等を参考にしながら、さまざまな交通手段を組み合わせたより利便性の高い交通システムの構築について検討してまいります。

 以上です。

      〔建設部長長谷川朋弘君登壇〕

◎建設部長(長谷川朋弘 君)立地適正化計画についてのお尋ねでございます。

 市町村間の連携につきましては、市町村の区域を超える広域的な調整が都市計画における県の役割の一つでありますので、立地適正化計画に関しても、市町村境を挟んだ計画の整合性などを確認しております。御指摘のありました松本市、塩尻市境の誘導区域については、現在の土地利用状況を反映したもので妥当な設定と考えております。

 また、災害と立地適正化計画の関係ですが、御指摘のとおり、今回の災害で居住誘導区域の一部で浸水被害が発生しています。

 一方で、日本の都市の多くは、その成り立ちからして河川の氾濫原に形成されております。特に、長野県は山と川に挟まれた狭い場所に都市が形成されており、土砂災害や水害のリスクがない場所は少ないと考えております。

 これまで、国と県では、土砂災害特別警戒区域等を避けて誘導区域を設定するよう助言を行ってきましたが、今後は、水害も含めたさまざまな災害を想定し、災害のリスクの大きさと防災対策の状況を勘案した上で計画の策定や見直しを行うよう助言してまいります。

 市町村との情報共有や意見交換については、従来からさまざまな機会を設けて行っておりますが、特に、立地適正化計画を今後策定する市町村の中には、都市規模が比較的小さく、他市町村との連携や機能分担が必要となる市町村もありますので、県と関係市町村の間で検討や調整を行う機会を設けていきたいと考えております。

 以上でございます。

      〔知事阿部守一君登壇〕

◎知事(阿部守一 君)権限、財源、人材それぞれ縮小し続ける各市町村の交通政策を県として広域的にどう捉えているかという御質問であります。

 まず、交通政策は県として大変重要な政策だというふうに思っております。公共交通に係る協議は、一般的に市町村単位の活性化協議会等で行われておりますけれども、住民等の利用実態、長野県の市町村の場合は小規模市町村が多いわけでありますし、また、人の移動は、その市町村域を超えて移動しているというようなことを考えれば、市町村域を超えた広域的な公共ネットワークが重要だというふうに思っております。そういう意味で、広域自治体としての県としても責任を持って取り組んでいかないといけない課題だというふうに思っております。

 交通の問題は、県と市町村との関係の前に、そもそも国と地方の関係に極めて大きな問題があるのではないかというふうに私としては思っております。交通の権限は、残念ながらほとんど国が握っております。また、地方における交通財源も非常に乏しい。これは、国全体でも、公共事業等にかかる財源と交通にかけている財源を比べれば桁違いというような状況もある中で、国の全体としての財源配分、そして国と地方の間の権限配分、こうしたものをしっかりと見直さなくては、幾ら県と市町村が頑張っても地域公共交通が元気になる、充実するということにはなかなか結びつけづらいという現状だというのが私の認識であります。

 県としては、これまでも、地域振興局が積極的にかかわって広域的な公共交通の課題に取り組んできております。南信州、木曽、北信で、先ほど部長からの答弁でも申し上げましたように、地域振興局が中心となって地域公共交通適正化サポート事業を進めているところでございます。特に、北信地域では、地域振興局が主導して広域の地域公共交通網形成計画策定を進めているという状況であります。こうした県としての取り組みをもっともっと強化していかなければいけないというふうに思っております。

 医療や教育などさまざまな政策を進める上でも、通院の足をどうするか、通学の足をどうするか、そういうこととセットで考えていかなければいけない時代でありますので、市町村とはこれからもしっかり連携をして交通政策により一層力を入れていきたいというふうに考えております。

 以上です。