2017年6月定例会本会議
まちづくり警察行政と交通
○副議長(諏訪光昭 君)次に、百瀬智之議員。
〔5番百瀬智之君登壇〕
◆5番(百瀬智之 君)国土交通省は、ことし3月、大規模商業施設の新規出店に必要な事業者の渋滞対策を厳格化する方向で検討に入りました。郊外型の大型ショッピングモールなどが道路渋滞の一因になっているためで、国交省のモデル調査では、施設開業後に渋滞が2割以上ふえ、周辺の事故件数も約2倍に膨らんでいたと言います。全国の主要な渋滞地点約9,000カ所のうち、大規模小売店が原因と見られる渋滞地点は1割強の約1,200カ所に上り、幹線道路沿いの大規模小売店は、平成22年以降、5年間で1.5倍にふえており、渋滞悪化への懸念が高まっています。
国民1人当たり年間100時間程度の道路移動時間のうち、約4割は渋滞に費やされ、それは年間50億人時間、約280万人分の労働力に匹敵すると言われます。国交省道路局は、渋滞が減れば他の経済活動に充てられる時間がふえ、生産性向上が図れるとして、昨年から渋滞対策を本格化しており、これらに鑑みると、渋滞対策は、経済的観点からも、また県民の安全性確保のためにも喫緊の課題と言うことができます。
さて、松本市では、今でも朝晩や土日を中心に慢性的な交通渋滞が発生しているところ、この秋には市街地でイオンモールがオープンします。敷地面積約6万2,500平米、毎日平均3万人以上の集客を目指す施設ですから、渋滞悪化に拍車がかかることは確実視されます。松本市実施の交通シミュレーションによれば、その影響はイオンモール松本周辺にとどまらず、市街地全域に大きく及ぶとのことで、関係機関は、一過性のものである、局所的な問題であるとうがった見方をすることなく、当事者意識を持って万全の対策を講じてほしいと思います。
そこで、今回は、この秋以降を見越しての松本市街地全域に対してどのような交通対策メニューがあるか、信号運用の見直し、エリア対策、交通の分散、重点箇所対策の大きく四つの観点から県警にお尋ねします。
まず、信号運用の見直しについてです。
交通の流れが刻々と変化する中、現在の信号運用が適応できなくなる箇所や新たに渋滞ポイントとなる箇所には信号秒数等の調整が求められます。また、速度低下箇所が連続するところなどは、オフセットの調整など路線としての見直しが必要であり、信号秒数及び連動オフセット等の調整を行う予定はあるか、お尋ねします。
また、通常、信号機は路線単位で複数の信号機をまとめて同じサイクルで運用するなど、系統がとれるような制御を行っているとお聞きします。市街地への流出入ルートを十分に把握して信号制御グループを交通の流れに適合したものに見直す必要について御所見を伺うとともに、矢印制御による方向別の信号処理等を適宜導入して、交差点での処理がより最適化されるよう、信号現示の見直しについてのお考えを伺います。
二つ目に、管制エリアの状況についてです。
市街地等で定常的に速度低下が発生しているエリアのうち、交通管制が未整備となっているエリアがあれば、管制エリアを拡充せねばなりません。また、管制エリアと既になっていても、近年供用された新設道などは、交通の実態に応じて機器の増設などの対策を講じる必要があります。これらのエリアに集中制御器や車両感知器、交通監視カメラを整備することにより、交通量に応じた信号制御を実現し、渋滞情報をより的確に収集、提供することが可能になり、ドライバーの自律的な渋滞回避行動を促せます。
そこで、管制エリアの現状について伺った上で、集中制御器及び車両感知器、交通監視カメラを増設する予定はあるか、御教示願います。
三つ目は、交通の分散についてです。
ドライバーに提供する情報の量や質、方法については、効率的で機能的なものを随時検討していただきたいと思います。具体的には、ドライバーがルート選択の判断を行いやすいよう、混雑状況のリアルタイム提供を促進するため、車道における情報板の増設が有効と考えますが、いかがでしょうか。
また、情報板への表示も、複数経路の混雑情報を同時に表示するなど情報提供の高度化を望みますが、いかがか。お尋ねします。
四つ目に、重点箇所対策、とりわけイオンモール松本に関する交通対策について伺います。
全国でイオンモール開店に伴う渋滞悪化が課題とされていたのが、約2年半前に開店したイオンモール岡山とことし4月に開店したイオンモール徳島で、それぞれ県警が積極的に交通対策に乗り出していたようです。
例えば、松本市が開いている交通対策会議について、岡山県では県警が事務局となり、オープン1年前から会議を実施したようで、交通に関するアンケート調査や公共交通利用に関する呼びかけも積極的に行ったとのことでした。また、ことし4月開業のイオンモール徳島では、緊急車両の通行への影響等を考慮して、県警がイオンモール内に警察官立ち寄り所を設置したり、リアルタイムで信号調整をしたり、開業してすぐのゴールデンウイークには、ヘリコプターを出動させて渋滞情報を収集したともお聞きします。
翻って松本市ですが、岡山で37基増設された車両感知器を2基増設する予定で、あとは信号調整とスクランブル交差点化による案が公表されていますが、全体像はどうなっているのか。イオンモール出店に伴う県警の交通対策を網羅的にお尋ねします。
最後に、一般的に渋滞対策は、道路管理者に対しては道路の拡張などを、開発事業者に対しては十分な駐車場の確保などを望むことが多く、実際、郊外においてはそれでよいと思いますが、市街地においては、本来的に別の原則が適用されるべきだと考えます。それは、車のために道路を拡張し、駐車場を整備することが想定以上のマイカーを市街地に呼び寄せることになりかねず、それが次の渋滞、騒音、事故などの問題を引き起こすからです。とりわけ、都市空間の浪費と消失は深刻で、商業施設が集積する中心市街地でマイカーの過度な空間占拠により移動人口密度の極端な低下が惹起されることは、にぎわいの創出という観点から大きな問題だとも思うわけですが、そのような考えに立脚した場合には、道路管理者や開発事業者にも増して、交通規制に係る県警の責任が総体的に大きくなってきます。
そこで、県警には主体的かつ積極的な対策を望むとともに、松本市街地及びイオンモール周辺の交通渋滞についてどのような認識を持っているのか伺います。
以上、全ての項目を県警本部長に質問して、今回の一般質問を終わります。ありがとうございました。
〔警察本部長尾﨑徹君登壇〕
◎警察本部長(尾﨑徹 君)松本市街地全域の交通渋滞について、大きく4点御質問がございましたので、順次お答えいたします。
最初に、信号機の運用の見直しなどについてお答えいたします。
まず、一般に、都市部では道路交通が複雑、過密化し、交通渋滞などの一因となっていることから、警察では、交通管制システムにより車両感知器などで収集した交通量や走行速度などのデータを分析し、その分析結果に基づき信号の制御や交通情報の提供を行うことにより交通の流れの正常化に努めているところでございます。
交通管制センターでは、このシステムを運用しており、同センターで制御している地域を管制エリアと称しております。松本市の場合、管制エリアは、市街地から郊外の幹線道路まで既に整備されており、交通量の最適化が図られていますので、現状では信号秒数や連動オフセットなどの調整や信号制御グループの見直しについては必要ないと考えております。
なお、著しく交通量が増加し、通常のシステムの運用では対応できない場合が生じた際には、交通管制センターにおいて信号機の秒数調整を行い、最適化を図っております。
次に、管制エリアについてお答えいたします。
管制エリアにつきましては、ただいま御説明いたしましたとおり、既に松本市街地及び郊外の幹線道路まで整備しておりますので、御理解いただきたいと存じます。また、現在、今回のイオンモール松本出店予定地周辺の信号機への車両感知器の増設を進めているところでございます。松本市街地における集中制御器及び交通監視用カメラにつきましては、既に相当数が設置されており、これらの活用を図りたいと考えております。
続きまして、交通の分散についてお答えいたします。
道路交通情報提供の手段としては、ラジオによる放送、情報板のほか、道路交通情報通信システム、いわゆるVICSを活用しております。VICSは、光ビーコンなどを通じてカーナビゲーション装置に交通情報を提供するシステムで、時々刻々変動する道路交通の状況をリアルタイムで地図図面上に表示することができるほか、音声、図形、文字でもわかりやすく表示することができるものであります。
混雑状況を提供する情報板の増設につきましては、出店に伴う交通渋滞の状況などを確認し、必要が認められれば設置にかかわる費用対効果及び既存の交通安全施設を活用した場合との比較検証などを総合的に行い、最善の施策を選定した上で情報の提供を行ってまいりたいと考えております。
次に、イオンモール松本に関する交通対策についてお答えいたします。
出店に伴う県警の交通対策につきましては、ただいま申し上げましたイオンモール松本出店予定地周辺の信号機への車両感知器の増設のほか、灯器のLED化などの信号機改良、周辺に既に設置されている交通監視用カメラによる交通流の把握と信号機の秒数調整などにより渋滞対策を図ってまいります。また、開店直後を初め、休日の交通量がふえる時間帯に現地調査を実施し、必要により交通実態に応じた信号機の秒数調整を実施する予定でございます。
なお、イオンモール松本の出店計画に伴い、警察からイオンモール松本設置者に対し、駐車場の出入り口の数、位置、駐車待ちスペースの確保など交通管理上必要な指導、助言を行ってきたところでございます。
松本市街地につきましては、道路環境に比べ交通量が多く、交通渋滞が発生する状況が見られることから、道路管理者を初め関係機関などとの協議、働きかけをさらに推進し、渋滞解消に向け取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。