2015年6月定例会本会議
まちづくり交通まちづくり諸策
○副議長(小島康晴 君)休憩前に引き続き会議を開きます。
続いて順次発言を許します。
百瀬智之議員。
〔5番百瀬智之君登壇〕
◆5番(百瀬智之 君)交通とまちづくりの連携施策に関し一括して5点お伺いします。
2013年12月4日に交通政策基本法が公布、施行されたことを受けて、昨年11月20日、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律が施行されました。同改正では、コンパクトシティーの実現に向けたまちづくりとの連携、地域全体を見渡した面的な公共交通ネットワークの再構築を狙って自治体が地域公共交通網形成計画を策定できることとし、国と地方が一体となって地域公共交通特定事業を推進できる内容となっています。
そこで、一つ目を質問いたします。
市町村運行のコミュニティーバス間の効果的な接続や鉄道系パーク・アンド・ライドの駐車場整備など、持続可能な地域公共交通網の形成は広域的見地をもって図られることが期待されています。同改正では、当計画について、広域的な交通圏にも対応できるよう市町村が単独または共同して作成するほか、都道府県も市町村と共同する形で作成することが可能になりました。
長野県としてどのような形で地域公共交通網形成計画にコミットしていくつもりか。企画振興部長にお尋ねいたします。
同様に、昨年5月、都市再生特別措置法の一部が改正され、コンパクトなまちづくりと公共交通によるネットワークの連携が初めて明確化されました。コンパクトなまちづくりを進めるためには居住や福祉などの民間の施設や活動が重要であることから、都市全体を見渡しながら、中心拠点にそれらを誘導するよう焦点を当てています。
市町村にはまちづくりの担い手として新たに立地適正化計画を作成することが期待され、計画の実現には隣接市町村との協調、連携が重要になってきます。この計画の作成に当たっては、ことし5月15日、具体的な取り組みを行っている都市が国土交通省より発表され、長野県内では長野市、松本市、上田市、小諸市、駒ヶ根市、千曲市、佐久市が掲載されています。
市町村は、計画の内容について都市計画区域マスタープランとの整合に関し整理、確認が必要になる場合があるでしょうし、必要に応じて長野県の部局と協議することが望ましいと考えます。また、市町村が立地適正化計画を作成する場合には市町村都市再生協議会を設置することができますが、これには都道府県や隣接市町村が参画することも考えられます。
これらを踏まえ、長野県は立地適正化計画の作成と実行においてどのようにかかわっていくか。建設部長にお聞きします。
同改正法について関連質問します。
立地適正化計画区域内には居住誘導区域と都市機能誘導区域の双方を定め、これらの誘導区域内に居住や医療、福祉、商業、公共施設などさまざまな機能を集積する方針をとっています。 人口減少時代に突入し、既存集落の隅々までフルセットの行政サービスを行き届かせることが現実に不可能になっている今、中心拠点に重点的に税を投入し、中心地に一定の人口を誘導することで民間投資を促進し、中心市街地の地価の下落を防ぎ、拡散による将来市民の負担を防ぐという戦略は極めて合理的であり、中心拠点への投資によって確保した税を、その先に、中山間地への特別な補助の財源にしっかりと回していくことが大事だと考えます。
そこで、同改正では、中心拠点たる都市機能誘導区域と居住誘導区域への誘導策として、それぞれに多種多様な支援措置が盛り込まれています。また、市町村レベルでも、建設事業者や住宅購入者などへの助成により中心拠点を充実させ、コンパクトシティー化の成功例をつくっている自治体が出てきています。
長野県としても、中心拠点への誘導支援策の実施を前向きに検討すべきではないでしょうか。建設部長にお伺いいたします。
次に、モビリティーマネジメントについてお聞きいたします。
御承知のとおり、モビリティーマネジメントとは、過度に自動車に頼る状態から、公共交通や徒歩などを含めた多様な交通手段を適度に利用する状態へと自発的に変えていく取り組みを指します。
ヨーロッパ初め、世界各国では、毎年9月の1週間を使ってモビリティーウイークが開催され、松本市も参加して長年が経過します。
これは、いわば自動車と都市交通、そして市民の健康と生活の質を考えるEU主催の交通週間です。マイカーを使わない交通手段の長所を啓蒙し、公共交通や自転車、徒歩による交通手段を世界各都市に普及し、それに合った交通インフラを整備することを目的として、モビリティーウイーク中は公共交通機関が増便されたり、新たな交通手段の紹介がされて持続可能な交通施策が展開されます。
ヨーロッパの中心市街地では、現在、以前は自動車に占拠されていた交差点の多くが広場となり、自動車が通行していた道路は歩行者の空間に変わりました。大勢の人々があふれるほど町を行き交うようになった背景に、モビリティーマネジメントが果たした役割は大きいものがあります。
モビリティーマネジメントの取り組みに関して、県としては第1回長野県モビリティ・マネジメント検討会議がことし5月に開催されたと認識しておりますが、今後は、モビリティーウイークやいわゆる交通安全週間などとあわせての効果的な施策展開のほか、信州山の日月間にそのような発想を取り入れていけば長野県らしい特色と意義ある施策になると考えます。
どこにいても標高が高い長野県内においては都市部からも雄大な山々を見渡すことができ、この月間中は歩行者優先あるいは公共交通機関や自転車優先の生活を推奨することで、改めて信州に住み暮らす我々の生活満足度を充足し、健康長寿県としてのコンセプトを一層推し進めるものと確信します。
県の交通施策にモビリティーマネジメントを加速度的に取り入れるべきではないか。企画振興部長にお伺いします。
以上、概観いたしましたが、世界の潮流や国の施策は歩行者優先と公共交通機関の充実を志向してきており、それはまちづくりや定住促進と密接なものであります。
かつて、およそ1時間に1本のペースで細々運行していた地方鉄道が、次世代型交通を導入して日中は15分間隔の運行となり、利用者を大幅に増加させて地方のにぎわいを創出させているというのは、現在隣の県で起きていることでもあります。
新しい交通体系による町を構築した場合、歩行者に配慮した都市空間では今にも増してお年寄りや若者、親子連れが町に出てきて、買い物や散歩を楽しんだり、集って談話をしたくなります。観光客はゆったりと歩きながら歴史的な町並みを観光することができます。一義的には市町村が主体となって取り組むことでありながらも、まさに長野県の風土や気質に合致するイメージではないでしょうか。
国の法改正やモビリティーマネジメントに関する諸外国の取り組みを踏まえ、長野県にふさわしい、人が大事にされる、歩行者が優先される交通政策とまちづくりの展開にどう取り組むのか。最後に阿部知事にお聞きして、私の質問を終わりにいたします。ありがとうございました。
〔企画振興部長小岩正貴君登壇〕
◎企画振興部長(小岩正貴 君)百瀬智之議員からの御質問に私には2問いただきました。順次お答えを申し上げます。
まず、地域公共交通網形成計画についてでございます。
この計画は、地域住民が日常生活を営む交通圏におきまして、公共交通の目指すべき方向性や提供されるサービスを網羅的に記載するものでございます。従来の公共交通政策と比べまして、新たな視点としてまちづくりとセットで考えることが特徴となっております。また、地域全体を見渡し、面的に公共交通ネットワークを再構築するものであり、地域にとってのまさにマスタープランと位置づけられるものと考えております。
策定に当たりましては地域の住民、関係団体や交通事業者の合意が必要であり、まちづくりとセットという点からも市町村の取り組みが欠かせないところでございます。
県といたしましては、広域的な交通ネットワークとの整合性や専門的な知識、事例等を提供することで、各市町村における取り組みを支援、後押ししてまいりたいと考えております。
次に、モビリティーマネジメントについての御質問でございます。
地域における身近な公共交通の利用促進を図るに当たり、議員御指摘のモビリティーマネジメントの手法は効果的であると認識をしております。
長野県内におきましては、これまで、パンフレットの作成やイベントの実施など、公共交通の利用促進のための個別の取り組みはございました。しかしながら、モビリティーマネジメントとして体系的に取り組んだ事例はほとんどなく、そのことが課題であると認識をしております。
そこで、本年5月に、交通事業者や市町村等の実務担当者をメンバーとした、議員御指摘の長野県モビリティ・マネジメント検討チームを立ち上げたところでございます。今後、秋ごろをめどに課題の抽出や対応策をまとめていく予定でございます。
県といたしましては、検討結果を踏まえ、市町村、交通事業者等の取り組みを支援していくとともに、みずからもモビリティーマネジメントに効果的に取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
〔建設部長奥村康博君登壇〕
◎建設部長(奥村康博 君)いただきました御質問2問につきまして順次お答え申し上げます。
まず、立地適正化計画の策定と実行における県のかかわりについてのお尋ねでございます。
昨年5月に都市再生特別措置法の一部が改正され、公共交通を充実させるとともに、歩いて暮らせるコンパクトなまちづくりへの方向性が示されたところでございます。この法律の改正によりまして、市町村が都市機能を集約化する区域と居住を促進させる区域を立地適正化計画として定めることができるようになり、重点的な施設整備などコンパクトなまちづくりの実現に向けた施策の展開が可能となります。
県内では7市が計画策定に着手しておりますが、計画の策定に当たりましては、県が定める都市計画区域マスタープランとの整合を図るなど、市町村と県との連携が重要になると考えております。
県といたしましても、今後、計画策定を予定している市町村と課題や情報を共有し、より望ましい計画の策定と実行が可能となるように、広域的な観点からの技術的な助言や情報提供、計画策定への参画など、積極的にかかわってまいります。
次に、県として居住や都市機能の誘導支援策の実施を前向きに検討すべきではないかとのお尋ねでございます。
都市再生特別措置法の改正では、コンパクトなまちづくりの実現に向けまして、中心市街地における医療、福祉、商業等の誘導施設の整備に対して新たな支援制度が創設されるなど、国の支援制度が拡充されました。これらの支援制度を活用して、現在、県内においては、佐久市、小諸市で医療施設等、駒ヶ根市で商業施設等を中心市街地に整備していくなど、コンパクトなまちづくりが進められております。
また、他県の例としましては、富山市においては、町なかへの居住を推進するための住宅建設を支援するなど、国の支援制度を活用した独自の取り組みが進められております。
県といたしましても、引き続き、まちづくりの主体である市町村の取り組みに対しまして先進事例や国の支援制度などの情報提供、技術的助言を行うとともに、今後、市町村からの要望や他県の状況を見ながら、誘導支援策への取り組み方について検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
〔知事阿部守一君登壇〕
◎知事(阿部守一 君)交通、そしてまちづくりについての御質問でございます。
百瀬議員御指摘のとおり、人が大事にされ、歩行者が優先される交通あるいはまちづくりの実現、こうした観点は私も大変重要だというふうに考えています。
そうした思いで平成25年に長野県新総合交通ビジョンを策定しておりますが、この中でも、中心市街地にあっては生活に必要な機能を集積したまちづくりとあわせ、歩行者、自転車、公共交通が優先されるまちづくりが進むことを目指す将来像の一つというふうに掲げているところであります。
ドイツ、フランスなどのヨーロッパ、あるいはアメリカ等の先進事例を見ると、中心市街地への歩行者専用ゾーンあるいはゾーン30の導入にあわせて、路面電車、あるいはパーク・アンド・ライド駐車場の整備、さらには自転車レーンの設置、公共貸し自転車システムの整備、こうしたことが取り組まれているわけでありますし、私も横浜市で環境モデル都市の担当の副市長をやっておりましたけれども、みなとみらいを極力自転車で回れるような取り組みを工夫をしてきましたし、あるいは、海外に出かけていっても、かつてオランダに行きましたが、オランダはかなり町なかでも自転車で移動されている方は多かったですし、先ごろワシントンDCへ行った際には、公共の貸し自転車システムで大勢の皆様方が日常の暮らし、あるいは観光に利用されているという意味ではかなり進んできている中で、まだまだ日本の取り組みは全般的におくれているなというのが率直な思いであります。
これは、暮らしの豊かさという側面、あるいは環境に優しい地域をつくるという側面、さらには人と人とが触れ合う環境をつくる等さまざまな観点から、自動車中心のまちづくりから人間中心のまちづくりをしていくということは大変重要だというふうに思っております。
また、長野県、今、世界水準の山岳高原観光地づくりということで取り組んでいますが、世界の進んだ観光地ではまさに今言ったようなことが総合的に取り組まれているわけであります。
私の悩みとすれば、横浜市のように政令指定都市であれば基礎自治体の権限と広域自治体の権限を一緒に持っているわけでありますのでかなり取り組みやすい環境があるわけですが、長野県はそういう状況ではありません。まちづくりの主体である市町村の皆様方のお考えをしっかり承りながら、しかしながら、他方で、今申し上げたような世界の先進的な取り組みということは県としてもしっかり学びながら、市町村と一緒になって交通、まちづくりを進めていきたいというふうに考えております。
以上です。