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2019年6月定例会本会議

もりづくり

信州花フェスタを契機に

○副議長(荒井武志 君)休憩前に引き続き会議を開きます。

 続いて順次発言を許します。

 百瀬智之議員。

      〔13番百瀬智之君登壇〕

◆13番(百瀬智之 君)世界共通の目標であるSDGsが徐々に浸透し、その根源的な価値観として、いかなる経済活動や社会活動も健全な自然環境なしには持続できないということ、裏を返せば、健全な自然環境を構築することが将来的な経済活動や社会活動に可能性をもたらすという認識が広がってきました。経済性や効率重視で進めてきた政策を環境ベースに再構築するとはどういうことか。そんな問題意識のもとに本日は話を進めたいと思います。

 林業は、昨今、木は切って使う時代だという御時世です。今の森林のつくり方を改めて見てみると、木を切り出すことによって森林を同時並行的につくっていくという手法が主流です。それ自体は理にかなったことだと思う一方で、切り出すことに主眼が置かれている今だからこそ、本当にあるべき方法によって森林づくりがなされているのか真剣に考えねばなりません。というのは、一度切ってしまったら容易には復元できない手前、里山などでは明確な将来の姿を意識してつくられてきたわけではないところが多く、それは、放っておけば林内が茂り、結果、植物相が単調化し、生物相も単調化するところを、ひとまず手を入れていけば里山は再び多層化し、生物多様性に富んだエリアに向かっていくであろうという一種の希望的観測に基づいた営みが現場を支えていることや、また、一見しっかりした生産現場であっても、植林、下刈り、間伐、皆伐、再造林のサイクルで、いわば、森林を材木の畑と見立てて一斉に全面を変える考え方は依然根強く、大面積に効率化だけが特化していくことを憂慮するからであります。

 長野県が森林づくり指針に基づいて進めようとしている適地適木の考えであったり、単一の針葉樹人工林よりもさまざまな年齢の針葉樹と広葉樹が混在する針広混交林のほうが一般的には木々の根の張り方や光の入り方がよく、結果として森林の力を最大限に引き出し、災害や伝染病に強い森林になり、仮に何らかの影響である樹種の材価が下がってしまったときにもその他の売れる木材が森林内に複数残っていることになり、結果的により大きな経済効果が見込まれると言われます。

 しかし、実際にそれらを実現できるかどうかは、現状ではひとえに現場の差配に委ねられており、環境本位の森林づくりは制度としては全く担保されていないわけであります。森林資源が豊富になってきたという声は聞けど森林が美しくなってきたという声を聞かないように、森林の多面的機能の発揮をそのような里山振興や林業政策のみに頼ることは限界を迎えていて、指針やもろもろの計画が理想とする森林の姿を実現するためには、生態系の保全政策や自然景観行政を含めた環境面からのもう一つのエンジンを構築せねばなりません。

 これは、町なかにおいても同様で、頭の中では多くの人が都市緑化が進むことはいいことだと思っていても、それらはゴールを描いて体系的に推進されるものではなく、別の優先事項がある、既存の道路建設行政や河川整備事業の延長で計画されることです。よって、例えば、虫がつく、鳥が糞をして困る、落ち葉が邪魔だなどという声が道路建設上もしくは河川整備上もっともなことだとなれば、それらへの対応は、生態系を豊かにし、食べる、食べられるの連鎖をつくる中で解決をしていこうという発想にはならず、環境政策的には常に緑を削減する圧力を迫られる構造となっています。

 こうして見てくると、環境をベースに経済と社会を再構築するということは、今まである程度やってきたことだという意識を一旦捨てて、ゼロベースで、いや、むしろ今までやってきたことは弊害にすらなり得るという認識で環境政策を始動せねばならない、そんなことを感じます。

 そこで、伺います。まず、信州の森林にはそもそもどのような特徴があり、地域ごとにどのような差異があるのか概括的な説明を求めた上で、近年の里山整備事業や本年4月から施行されている新たな森林管理システムではどのような森林づくりが行われているのでしょうか。また、理想の森林に向けた人材の育成には長期的にどのような課題があるのか、林務部長の認識を伺います。

 そして、重要なことは、そのような専門人材を通じてみんなが同じ方向を向いて取り組むことであり、そのためには、素人から玄人まで誰もが気軽に行き届いた知識にアクセスできる環境づくりが不可欠です。

 思えば、昨年の8月に覚書を更新したオーストリア連邦自然災害・景観研究研修センター、通称BFW。4年前に同行させていただいたのは記憶に新しいところで、このBFWが、森林遺伝学研究所、森林生態学・土壌研究所などなど傘下に六つの研究機関と二つの研修所を抱え、膨大かつ変幻自在な森林情報を丁寧にくみ取り、研究し、教育、訓練に還元していくさまや、それらの知見に基づいてとにかく根気強く自然を観察することが大事だと言っていた現場の人々の姿は大変印象的でした。

 長野県の林業総合センターや環境保全研究所は経済活動や社会活動においては役割を果たしていると思いますが、健全な自然環境の構築に主体的な役割を果たしているでしょうか。環境本位の森林づくりに向け、機能強化あるいは組織再編が必要と考えますが、いかがか。こちらは知事に伺います。

 続けて、都市緑化についてお尋ねします。

 議案説明にあるとおり、信州花フェスタを契機に、公共空間の緑化に一層力を入れるとのことで期待は大きいです。全国的には、都市緑化でも、ある特定の種類によらない複数種類の、かつ地域特性に見合う在来種を用いた街路樹の構成、公園づくりが見られるようになってきました。東京都では、5年前に在来種選定ガイドラインを発表し、植栽する植物の種類の選び方や配慮事項をまとめています。本県においては、現在、どのような指針あるいはガイドラインに基づいて現場の植栽がなされているのでしょうか。また、花や緑が生み出すくつろぎや余暇の場を存分に享受し、それを地域のにぎわいにかえていくため、一般質問や委員会質疑ではかねてより公園における公募設置管理制度、いわゆるPark-PFIの導入を求めてまいりました。進捗はどうか、実施時期について改めて伺います。

 さらに、県有施設を核に、樹林地や河川など地域のビオトープが相互に接続していくことを要望しますが、県有施設自体もその過程でブラッシュアップされていかねばなりません。花フェスタを機に、信州スカイパークはどのようにステップアップをするのか。

 以上、建設部長の見解を求めます。

 最後に、都市緑化に当たっては、先ほど述べたとおり、既存の推進体制を抜本的に見直すことを望むとともに、人と人、人と自然が敏感にせめぎ合う場所ですから、県民が目指すべきまちの姿をより明確に示していくこと、そして、まずは町なかの花や緑をふやすことを盛り込む条例制定など、県民が一つにまとまれる理念の存在が必要と考えます。この点、いかがか。花と緑のまちづくりについての知事の所感をお伺いし、今回の一切の質問といたします。ありがとうございました。

      〔林務部長井出英治君登壇〕

◎林務部長(井出英治 君)信州の森林の特徴と地域ごとの差異についてのお尋ねでございます。

 本県の森林面積は106万ヘクタール、全国3位の規模で、広大な面積と標高差を背景に、多様な樹種で構成されていることが特徴です。

 例えば、本県の代表的な樹種であるカラマツについては、東信地域を中心に県内に広く分布している一方、木曽谷のヒノキ、中部山岳や伊那谷のアカマツ、南信州や北信地域のスギなど、地域ごとに豊かな個性があります。

 こうした多様な樹種ごとに森林管理の手法もさまざまで、さらに、森林の機能に着目すれば、木材生産に適した森林、水源涵養や土砂災害防止などの公益的機能を重視すべき森林、地域の皆さんが親しむための里山林など、期待される役割や地形、地質等の生育条件などに応じて森林づくりの方向性もさまざまであると認識をしております。

 里山の整備・利用事業及び新たな森林管理システムについてのお尋ねでございます。

 里山の整備・利用事業は、従来の取り組みでは整備を進めることが困難であった小規模所有森林などを対象に長野県森林づくり県民税を活用して森林づくりを支援しているものであり、地域の里山の状況に応じて、県民の皆さんの協働により、薪づくりのための里山整備、子供たちの学びの場としての環境整備、観光誘客のための景観整備など多様で自立的な森林づくりが各地で展開されています。

 また、新たな森林管理システムは、所有者による管理の意向のない森林や所有者不明森林等について市町村が所有者にかわって森林の管理や整備を行う新たな制度です。現在、各市町村が具体的な方針を検討しつつ制度運用の準備を進めており、本格的な運用が始まれば、林業経営に適した森林は木材生産を循環的に行っていくための森林づくり、林業経営に適さない森林では公益的機能の発揮を目指す森林づくりが行われる予定でございます。

 3点目、人材育成の課題についてでございます。

 議員の御指摘のとおり、森林資源の充実や社会の多様化、グローバル化などを踏まえれば、林業の現場技術に加え、資源の持続的管理や生態系の保全、里山の利活用など、より高度で多様な知識と技術を持った人材を育成していくことが必要となっていると認識をしております。

 また、こうした人材が地域で活躍するためには、林業の成長産業化を通じて林業を支える事業体の経営や就業環境の改善を図るとともに、環境、観光、教育、福祉分野などとの連携により、森林の多様な利活用を地域のビジネスとして発展、継続させていくことが必要です。

 加えて、県民の皆さんの森林の重要性への理解の深まりによって、森林・林業で働く人材が誇りを持って活動できる社会を創造していくことも重要な課題であると考えています。

      〔知事阿部守一君登壇〕

◎知事(阿部守一 君)2点御質問いただきました。

 まず、環境本位の森林づくりを推進するためには林業総合センター、環境保全研究所の機能強化等が必要ではないかという御質問でございます。

 林業総合センターでは、さまざまな樹種が混在する森林の管理技術、森林保護、植生回復等に係る研究や広葉樹林を含む自治体、企業の森林づくりへの助言指導等環境保全に資する活動も行っております。

 一方、環境保全研究所におきましては、気候変動の将来予測に基づいて、間伐等の森林管理が二酸化炭素の吸収に及ぼす効果や、竹林、松枯れの拡大予測の研究を行うなど、こちらも環境の観点から森林政策に資する取り組みを行っているところであります。

 このように、両者の研究テーマは関連する部分も多いことから、両機関におきましては、森林資源や気象観測のデータ、あるいは野生動物の生息状況等の情報を共有いたしておりますほか、気候変動に対する森林のモニタリングや動植物の放射能検査等については協力して行うなど、さまざまな連携を行っているところでございます。

 しかしながら、百瀬議員御指摘のとおり、大きな構想を持って将来に向けた森林づくりを進めていく上では、多くの研究、多くの知見が必要でございます。組織のあり方についても視野に入れながら、これらの機関の機能や連携の強化等を図っていきたいと考えております。

 続きまして、花と緑があふれるまちづくりにどう取り組むかという御質問でございます。

 全国都市緑化信州フェア「信州花フェスタ」を多くの皆様方に御協力をいただく中で成功裏に開催することができたということは、大変ありがたく思っております。このフェアを契機として、町なかに花と緑をふやす取り組みを継続させていきたいと思っております。

 条例制定というお話もいただきましたが、まずは市町村の理解や住民の緑に対する意識の醸成に努めていきたいと考えております。このため、今回のフェアを契機に設立いたしました信州緑化ネットワークと連携いたしまして、フェアにかかわった人と人とのつながりを生かして緑の担い手の輪を広げ、緑化に対する県民意識を高めていきたいと考えております。

 国においては、緑の多面的な機能を生かして公共空間等を整備し、都市の魅力や価値を高めていこうというグリーンインフラ推進戦略を進めようという考えがございます。県としても、この国の考え方、方向性は基本的には同じものと考えておりますので、積極的に取り組んでいきたいと考えております。

 このほか、農業高校、障害者就労施設、造園建設業協会の連携により生産された芝生の都市緑化への活用や森林づくり県民税を活用したまちなかの緑地整備事業などさまざまな施策を講じることによりまして、緑あふれるまちづくりに取り組んでいきたいと考えております。

 以上です。

      〔建設部長長谷川朋弘君登壇〕

◎建設部長(長谷川朋弘 君)まず初めに、植栽のガイドラインについてのお尋ねでございます。

 道路整備に伴い設置する街路樹につきましては、道路緑化技術基準に基づくとともに、維持管理への協力を含めて沿道の地域の皆様と相談して樹種を選定しており、地域の意向に合った植栽となるよう努めております。また、公園に設置する樹木につきましては、都市公園技術標準解説書に基づき植栽のゾーニング計画を作成し、適した樹種を選定しております。

 さらに、森林づくり県民税を活用して昨年度創設したまちなかの緑地整備事業では、長野県が定める居住地の緑化ガイドライン「長野県にふさわしい緑化木」から樹種を選定しております。

 今後も、これら基準やガイドライン等に沿って、信州の気候風土に合った都市の緑化に取り組んでまいります。

 次に、都市公園における公募設置管理制度の導入についてのお尋ねでございます。

 県管理公園における公募設置管理制度、いわゆるPark-PFIの導入につきましては、その検討手法としてサウンディング型市場調査を予定しております。松本平広域公園に関しましては、本年秋の調査開始を目指し、現在準備を進めているところでございます。

 次に、信州スカイパークの今後の展望についてのお尋ねでございます。

 松本平広域公園、通称信州スカイパークは、空港の緩衝緑地としての機能を持ちつつ、サッカーや陸上競技などさまざまなスポーツの場として、あるいは幅広い年齢層に対応したレクリエーションの場としてその役割を担ってきました。

 今回の都市緑化信州フェアでは、メイン会場として多くの皆様にお越しいただき、花と緑のすばらしさを体感いただく場となりました。当公園の今後のあり方としましては、都市緑化信州フェアの記憶と成果を受け継ぎ、スポーツ、レクリエーションといった従来の役割に加え、花と緑の拠点という機能を新たに備えた公園として整備と一層の活用を図ってまいりたいと考えております。

 以上でございます。2019年6月定例会本会議