2018年9月定例会本会議
もりづくりオーガニックマーケットをひらこう
○議長(鈴木清 君)休憩前に引き続き会議を開きます。
続いて順次発言を許します。
百瀬智之議員。
〔5番百瀬智之君登壇〕
◆5番(百瀬智之 君)本日は、アメリカ農業に起きている変化を皮切りに、オーガニックについてお尋ねします。
TPPや日米FTAに対する日本側の反対意見として常に主張されてきたのが、アメリカと通商協定を結べば、国際競争力が圧倒的に強いアメリカ産農産物が大量に流入し、日本の農業が壊滅的な打撃を受けるというアメリカ農業に対する脅威論でした。しかし、そのアメリカ農業にも最近ではさまざまな変化があるようで、例えば、アメリカ農業の柱を構成するトウモロコシと大豆。2017年の作付面積を見ると、トウモロコシが3,650万ヘクタール、大豆が3,646万ヘクタールに上り、それぞれが日本の国土面積に匹敵するほどの広さです。いずれも、生産高は世界最大であると同時に、これらの多くが遺伝子組み換え作物であり、アメリカの食品の8割がこうした作物を含むとされています。
しかし、この数年、消費者の間で、遺伝子組み換え作物を拒絶する動きが猛烈な勢いで広がり、そのため増加するオーガニック作物の需要に国内生産が追いつかず、輸入に頼らざるを得ないという事態になっています。特に深刻な大豆は、2016年は実に8割のオーガニックを輸入に頼ったと言います。遺伝子組み換え作物の栽培をやめて有機栽培に切りかえれば済むだけの話にも聞こえますが、農務省からオーガニックの認定を受けるには、最低3年の移行期間が必要となるのを初め、クリアしなければならない条件がいろいろあるため意外と難しいのだそうです。少し高くてもよい食品をというトレンドが広がった結果、有機取引協会のまとめによれば、2016年のアメリカでのオーガニック商品の売上高は過去最高を更新、この8年間でほぼ倍増しました。
さて、日本で有機農業と言えば、ひとえにつくるのが大変で、多くの手間隙がかかる一方、消費者にとっては高価格の割にメリットを実感しづらく、継続的な消費行動に結びつきづらいと言われます。確かに、実感として考えてみれば、日本ほど飯がうまい国はなく、それは私が日本人だからかもしれませんが、かの国では一般的な野菜などの生鮮食品とオーガニックのそれが差別化しやすいのに対して、日本では、オーガニックではない、スーパーに安く陳列されている品々が比較的高品質ですから、オーガニックの普及には並々ならぬ努力が必要なのかもしれません。有機農業を頑張ろうとでも言えば、もはや隔世の感を禁じ得ないという声も聞こえてきますが、しかし、一方で、有機農業の推進は、SDGsなど国際的な潮流に合致していること、国としても取り組み面積の倍増を掲げて力を入れていること、そしてまた、次回以降もこの点についてぜひ扱いたいと思っていますが、オーガニックは健康、福祉、教育などさまざまな分野に高い付加価値をもたらすものと考えますから、長野県として力強く推進すべきことと思います。
そこでお伺いします。
全体に占める取り組み面積が1%に満たない日本の有機農業ですが、長野県の有機農業の取り組み状況はどのようでしょうか。とりわけ、さきの4月に、第3期長野県有機農業推進計画が策定されましたが、第2期における有機農業への新規就農者数及び取り組み面積はどの程度の成果を上げたのか。また、有機JASの認定状況について、現在の長野県の位置づけはいかがか御提示いただきます。
そして、さきの農政林務委員会の現地調査に同行した際に感じたことですが、有機とはいかずとも、環境に優しい農業として、エコファーマー認定や信州の環境にやさしい農産物認証の制度があり、それらに関して、認定件数や面積の伸び悩み、減少が地元でも目につきます。これらに対する農業者の関心低下を懸念する一方、現場では、国際水準GAPに移行する動きもあるようですから、改めて本県は国際水準GAPや環境にやさしい農産物の基準について、どのような方針をとっているのか、以上、農政部長に見解を求めます。
さて、農業盛んな春から秋にかけてのこの間、有機農業に携わるさまざまな方とお話しすることができました。1人には、東信で有機農業を営む方。作付面積は8ヘクタールほどで、野菜を中心に60品目を栽培、年間の売上は約7,000万円に及び、五、六人を年間雇用、季節労働を含めると十数人で現場を回しておられました。特筆すべきは、農業に化学と経営の視点を徹底的に取り入れたことで、肥料から何からすべからく元素記号をもとに組み立て、虫やら天候やら全ての障害に対して元素記号をもとに肥料設計しているのだそうです。文系の私にはなかなか理解が追いつきませんでしたが、この方のいわば弟子たちが徐々に独立して、たくましく新規就農しているらしく、県内における有機農業の広がりを期待させてくれました。
また、県外では、例えば名古屋の中心街でオーガニックファーマーズを開き、その代表を務めている方。毎週土曜日午前中に朝市を開催し、約3時間にわたる1度の開催で1,000人以上の来客があり、2016年の売上は約5,500万円に達し、第45回日本農業賞「食の架け橋の部」大賞を受賞しておられます。単純に朝市で売ることだけではなく、多品種栽培や他の生産者がつくっていない野菜を生産するなど特色を出すことによるリピーターの獲得や、朝市と連動したイベントの開催等により消費者と生産者の数のバランスを考えた集客を図っているとのことでした。
この両名の共通項は、販路の確保に相当な力を入れていることで、6次化産業のお手本を見たような気がいたしました。今までオーガニックを買わない2大理由と言われてきたのが、オーガニックは高いからと、オーガニックを身近で売っているところがないからの二つでした。しかし、例えば20代、30代男性はオーガニックの購入意欲が高いと言われています。余り物を買いたがらないと言われるこの世代ですが、環境や社会貢献の意識が高く、価値観が合うものに関しては価格に関係なく内容や質を重視します。
また、ここ数年、一般のスーパーでの有機野菜や有機食品などの取り扱いがふえたのはもちろんのこと、イオンやライフといった大手流通企業による参入等もあり、より買い場がふえ、よりオーガニックは身近に入手しやすくなってきました。オーガニック、イコール、有機JASを認識し、購入時に有機JASマークを重視するという人もふえてきています。一足飛びにとはいきませんが、こうしたトップランナーの動向や社会情勢を踏まえると、特に消費行動を刺激する販路拡大の促進策は重要であるものの、後方射撃すべき長野県の施策は手薄であると感じます。
そこで伺います。
長野県では、「おいしい信州ふーど」の取り組みによる信州産食材の魅力発信や食の地消地産、農産物直売所の機能強化等に努めているところ、今般、長野県営業本部を設置し、長野県の特にすぐれた農産物等の販路拡大を図るとしています。大変よい取り組みだと思いますが、県外に目を転じてみると、ほぼ全ての都道府県が我が県の農産物こそはおいしいと言って競争しているわけですから、長野県としては、オーガニックという明確な基準に基づいた武器を手にとるべきと考えます。
そして、ふと思うことは、足元を見られてはいけないということで、例えば県庁の食堂についてはどのように考えておられるでしょうか。
先日も食堂でC定食をいただきましたが、並ぶメニューは、日がわり定食のほかに、ラーメンやカレー、うどんなどなど、注文すれば数十秒のうちに御飯が出てきて、一人一人が黙々と南の方角を向いて、物思いのうちに昼御飯をかき込む。早く、安くをモットーとするならば大変機能的な食堂だとは思います。
しかし、一方で、そこそこの社員食堂に通じている方ならば、訪れたときに何かしらの違和感を持つのではないでしょうか。
最近では、一般の人にも開放された社員食堂がふえ、メニューからインテリアまで、まさに会社のポリシーをそのまま体現するようなところがふえてきました。安くても味と品質に何かしらのこだわりを持っていたり、クリエーティブの源泉は食堂にあると考え、より創造的な空間にしてみたり、コミュニティーの場としての改善を図ったりとさまざまなようです。食堂に広告塔としての機能を持たせ、県民に開かれたという視点からは、県民が訪れたくなるような、そして、長野県のすぐれた農産物が意識的に使われたメニュー、今回のテーマで言えば、オーガニック素材がふんだんに使われたメニューが並べば県庁の雰囲気もまた変わってくると思いますが、いかがしょうか。県庁食堂のあり方について知事にお伺いします。
最後に、信州花フェスタ2019について伺います。
メーン会場のスカイパークでは、期間中、信州の食や物産品を販売する信州マルシェが開かれるやに聞いております。具体的な催しについてはまだこれから検討されると思いますが、その一環で、ぜひオーガニックのファーマーズマーケットを開催していただきたいです。大勢の来客に消費行動を促せるほか、一般に、出店者にとっては、卸店やフレンチ、イタリアンのレストランなどとの交流、取引の場としても期待できます。
また、マーケット開催を契機として、有機農業による地域活性化の取り組みや継続的な公園利用が望めるほか、他方、例えば県が実施する有機農業アドバイザー制度については、数年前にアドバイザーに就任したものの、これまで一度も何の話も来ないというアドバイザーの方の声も漏れ伝わる中で、ぜひそういった方々にもこのイベントに参加していただくなどして、この大型の催事を通じて、いま一度県の本気度を見せることは大変重要なことと思います。
改めて来年の信州花フェスタでオーガニックマーケットを開くべきではないかと知事の見解を伺い、今回の一切の質問といたします。ありがとうございました。
〔農政部長山本智章君登壇〕
◎農政部長(山本智章 君)有機農業の推進等について順次お答え申し上げます。
まず、有機農業の取り組み状況についてですが、本県では、平成18年に制定された有機農業の推進に関する法律に基づき、平成21年に長野県有機農業推進計画を策定いたしました。その後、平成25年には第2期計画を策定し、有機農業基礎技術講座の開催や環境フェアの会場における有機農産物の販売、販路拡大のための商談会への参加呼びかけなど、有機農業者への支援や消費者、技術者への理解促進等に取り組んできたところでございます。
さらに、本年4月には第3期の計画を策定し、これまでの取り組みに加えまして、有機農業実践者のレベルアップを目的とした講座や消費者と生産者の結びつきを強化するイベントの開催等も進めているところであります。
次に、第2期推進計画の成果についてですが、計画期間の平成25年度から29年度、5年間の有機農業への新規就農者数は、把握ができる新規就農里親支援事業を活用した就農者の数で22名となっております。
また、平成28年度末の取り組み面積は390ヘクタールで、25年度末の300ヘクタールに対しまして90ヘクタール、30%の増加となっておりまして、一定の成果が得られたものと考えております。
続きまして、有機JASの認定状況についてですが、農林水産省が取りまとめた平成29年3月末現在の最新データによりますと、認定を受けた有機農産物を生産する事業者数は、全国では2,269、そのうち長野県では71で、全国順位は8位となっております。
最後に、国際水準GAPや環境にやさしい農産物についての方針でございますが、エコファーマー認定制度や信州の環境にやさしい農産物認証制度は、化学肥料や化学合成農薬の使用を削減する農業者や農産物を認定する制度で、環境農業の推進を目的とするものでございます。
一方、GAPは食品の安全や労働者の安全等を目的とした生産工程管理の取り組みでございます。このように、両者の目的は制度的には異なっておりますけれども、農業の環境への負荷の軽減、農産物の安全性の確保等の観点からは、いずれも本県農業の持続的な発展に必要な制度であると認識をしております。このため、研修会の開催や農業改良普及センター職員の個別説明などによりまして、制度の内容、認証取得のメリット等を農業者の皆様に丁寧に説明をし、それぞれの取り組みの拡大を図ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
〔知事阿部守一君登壇〕
◎知事(阿部守一 君)有機農業の推進に関連して、2点御質問いただきました。
まず、私としては、この有機農業の推進、大変ありがたい御提言をいただいたというふうに思っております。
長野県として、新しいライフスタイル、社会をつくっていくという観点からも、また、本県は環境に優しく健康にすぐれて、そして、安全な食品、こうしたものにしっかり踏み込んでいくということが大変重要だというふうに思っております。そういう観点で、農政部初め関係部局でしっかりこの問題提起を受けとめて対応していきたいと思います。
まず、県庁食堂のあり方でありますが、これについては、県庁の10階食堂、長野県庁生活協同組合が運営を民間事業者に委託して昼食時と夕食時に営業しているものであります。そういう意味で、私の権限から少し遠いところで存在しているわけでありますけれども、職員の福利厚生の観点から、健康に配慮し、かつ安価で提供するということで営業をいただいております。メニューにつきましては、委託業者の裁量で対応していただいているわけでありますけれども、ただ、これまでも、定食の一つに長野県短期大学生とのコラボメニューを取り入れていただいたり、また、各課からの提案によるメニューの提供、例えば健康に配慮したエースメニューであったり、昔懐かしい学校給食メニューであったり、地域物産展にあわせた地元野菜のサラダ無料提供であったり、こうしたことを行ってきていただいております。県庁の食堂は、県職員のみならず県民の皆様方にも幅広く御利用いただく施設でありますことから、オーガニックを初め地消地産、あるいはジビエ振興等食に関連した県としての取り組みを実際に体験していただくことができるようなメニューの提供が可能かどうか、これは委託業者と今後協議をしていきたいというふうに思います。
続きまして、催事、催し物を活用した有機農業の普及についてという御質問でございます。
有機農業は、信州の美しい自然環境を守り、環境と調和した農業を推進すると同時に消費者の多様なニーズに対応するための重要な取り組みだというふうに考えております。
本県の有機農業を拡大していくためには、新規就農者の確保や技術支援とあわせまして、消費者の皆さんの理解の醸成、有機農産物の流通消費、こうしたものを活発にしていくということが重要だと考えております。
ファーマーズマーケットやイベントにつきましては、生産者と消費者が直接触れ合い、交流する貴重な機会であるというふうに考えております。消費者の理解、消費行動を促すとともに、生産者間の交流にも寄与するものというふうに考えております。
本県におきましては、人や健康、地域社会、環境に配慮した思いやりのある消費を長野県版エシカル消費として普及をしていきたいというふうに考えておりますが、来年1月開催予定のエシカル消費の企業フォーラムにおきましても、有機農業者と消費者が交流する機会をつくっていきたいと考えております。
また、御提案いただきました信州花フェスタ2019につきましては、開催時期が農作業の忙しい時期と重なり、また、販売できる作物が少ない時期であるという課題もございますが、有機農業を実践する農業者団体などの御意見を伺いながら検討していきたいと考えております。
以上です。