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9月定例会一般質問(前編)

【制限時間9分】以下原文

 今回は林政について、前段は木材の需要と供給、後段は持続可能な森林管理、と2つに分けてお伺いします。

 前段は木材の「需要と供給」についてはこの夏、信州エフパワープロジェクトをめぐるニュースが飛び込んできました。松本市の征矢野建材(株)が民事再生法の適用を申請し、燃料材の不足が経営を圧迫していたとのことですから、燃料材の需給バランスの現状を改めて整理して頂きたいと思います。

 まず林野庁によると、間伐材を主燃料とする発電所は2022年3月時点で全国に105カ所あり、2015年3月の13カ所から8倍に増加しています。県内の木質バイオマス関係者もやはり「燃料は取り合いになっている」と見ているようで、ただでさえ県内でも木質バイオマス発電所が増えているというのに、いわゆるCD材が県外にも流れていると漏れ伝わってきますから、本来、第一義的には資源立地に競争優位性が働く供給にどのような力が働いているというのでしょうか。そこで始めに、県内から県外に流出している木材が具体的にどの程度あり、流出の原因をどのように見ているか。関連してエフパワーの「需給調整会議」が果たせた役割と、課題は何だったのか、林務部長にお尋ねします。

 またかかる旺盛な需要を埋めるかのように、今定例会では補正予算案として、松くい枯損木等を活用する緊急対策事業が登場しました。確かにと、本事業の有効性を推し量る一方で、燃料材の不足は今に始まったことではない上に、議会のたびに、両脇に連なる松くい枯損木を縫いながら高速道路を走らせている身からすると、当初予算において、もっとネジを巻いたプランを提示すべきだったのではないか、と思わずにはいられません。処置可能でありながら未処置となっている松くい枯損木は県内に一体どれくらい存在しているというのでしょうか。このタイミングで出てきた本事業は、エフパワーに特化した支援策なのか。それとも一般的な木質バイオマス需要者を対象とした事業なのか。この点も含めて林務部長に明らかにして頂きます。

 そしてエフパワーについては、規模と共に集材範囲も広過ぎるのではないか、かねてより指摘されてきました。発電所から20km、50kmと同心円上に集材計画を立て、全県、県外からも木材をせわしなく運搬する姿よりは、例えば中信地区でも東山と西山にそれぞれ点在し、国道をまたがずとも裏山からの集材、端材処理で十分回るような小規模発電所。確かに過去にいくつか見て、聞いて、イメージしてきたのはそういう地域像でしたから、シビアな見方をすれば、今は市場原理が厳しくも健全に働いている最中にあるのであって、むしろ過度に公金を投入するようなことがあれば、それは公平な市場原理を歪めるのではないか、懸念致します。そこで知事におかれては、プロジェクトの存続に向けて今後、事業主体の欠損に対する支援などを含め、特別な財政支援をする考えはあるのか。ご答弁頂きます。

 またいくら発電所の木材需要が旺盛だとしても、それを上回る供給があれば問題ない、というか、むしろ望ましい経済循環が期待できるわけですが、残念ながら長野県の素材生産量はここ数年、想定目標に達していません。その要因をどう見ているでしょうか。こちらの理解によるとこれらの数字は森林利用の限界値や、木材需要の数値等を基に算出されておられますが、供給サイドの事情はどう盛り込まれているのか。それらを足元から積み上げる姿勢は大事だと思います。そこで素材生産目標に関しても、各地域における事業体の生産体制や経営的な条件なども考慮した、ローカライズされた計画の立案が必要ではないか。以上を知事にお伺いします。

【須藤林務部長答弁】

(バイオマス用の木材の流通状況について)

県内で生産される木材のうち、県外に輸送されて利用されているものは令和4年分では、県内で生産されたバイオマス用材16万2千立方メートルのうち、約14パーセントに当たる、2万3千立方メートルが、県外で利用されているものと承知しております。

県外への流出の背景といたしましては、県外の木質バイオマス発電所が増加していることに加えて、輸入木材の価格高騰により、国産のバイオマス用材の需要が、製紙・パルプ用材の需要と競合していること、また、近隣に木質バイオマス発電所がない圏域等では、県境を越えて、バイオマス用材が流出するケースがあることなどが主な要因であると認識しております。

(「信州F・POWERプロジェクト」における「需給調整会議」の役割と課題について)

「需給調整会議」につきましては、製材事業と発電事業で使用する原木の安定供給に向けて、需要側である征矢野建材と、供給側である県森林組合連合会など4団体で構成する「サプライチェーンセンター」との間で、定期的に開催されてきたものであり、県は、調整の場を設定する役割を担ってきたところであります。

この会議においては、原木の取引価格の調整は行わないものの、会議の開催により、木材の需要側と供給側が一堂に会し、直接意見交換等を行う機会が確保され、原木の安定供給に向けて、双方において一定の意思疎通が図られたものと考えております。

一方で、これまで、プロジェクト関連事業が進められる中での、「需給調整会議」に関する課題としましては、需要側が求める原木の量や樹種、納材時期などの条件の変化に対し、供給側の生産体制をマッチングさせることが困難であったことなどが挙げられるものと認識をしております。

(未処置の松くい枯損木の量について)

松くい虫病害虫被害枯損木は、山の中では、年数が経過すると腐朽(ふきゅう)が 進むことや台風などで倒木となるものもありますので、正確な材積の把握は困難でありますけれども、仮に最近5年間を見てみると、松くい虫被害量が約31万2千立方メートルで、そのうち伐倒駆除や枯損木利用などで対策済みの量が約18万3千立方メートルございます。残りの松くい虫被害により枯損木となりうる量は、約12万9千立方メートルと推測されます。

このうち道から近く、傾斜が緩やかで搬出可能なエリアは、民有林人工林の約30パ ーセントが該当してまいりますので、利用可能量は約3万9千立方メートル程度と推測をしております。

林内に放置されている松くい虫被害による枯損木は、災害防止や景観の観点からも早期の伐採・搬出の対策が求められており、今回の事業や森林づくり県民税を財源とした市町村森林整備支援事業も活用して着実に進めてまいりたいと考えております。

(地域木質資源活用緊急対策事業について)

9月補正予算案に計上させていただきました「地域木質資源活用緊急対策事業」は、山林に放置されている松くい虫等病害虫被害による枯損木が、災害防止や景観保全の観点から早期の伐採・搬出が求められていること、また、ウッドショックの木材需給ひっ迫や、その後の反動などにより柱や梁などに使用するA材や合板に使用するB材の需要が変動し、その結果、県内のバイオマス発電や薪、ペレットなどの熱利用に使用するC・D材の安定供給が困難になったことから、信州F・POWERプロジェク トを含めた県内全体の木質バイオマス発電や、熱利用の燃料材などとして、利活用する取組を支援するものでございます。

【阿部知事答弁】

(「信州F・POWERプロジェクト」の事業主体の欠損に対する特別な支援について)

県としては、この信州F・POWERプロジェクトに関して、単に事業主体の欠損の補てんを目的とするような財政支援を行う考えはございません。

このプロジェクトにおきましては、県としてこれまで、補助金執行者として、補助目的に沿った事業の指導あるいは、原木の安定供給に向けた関係者間の調整、あるいは、素材生産増加へつながる林業事業者への支援を行う役割を果たしてまいりました。

引き続き、こうした役割を誠実に果たすとともに、事業が円滑に継続されるよう取り組んでいきたいと考えています。

(県内の素材生産の状況について)

県内の素材生産量については、森林づくり指針に掲げた目標値は、令和4年の生産目標が80万立方メートルとなっておりますけれども、この10年間で、生産量につきましては約27万立方メートル、概ね7割程度増えてきているところでありますが、 残念ながら目標値には達していないという現状がございます。

この素材生産の伸び悩みの背景としては、近年、住宅着工数の伸び悩み等によりまして、製材用あるいは合板用の木材の需要と供給が伸びていないということ、そして、新型コロナウイルス感染症の拡大で素材生産活動が停滞したという時期があるということ。また、間伐から主伐へのシフトの遅れ、あるいは、林業人材の不足などのため、山側の生産体制が需要に追い付いていない、こうしたことが要因であるという風に考えております。

県としては、素材生産のさらなる増加に向けて、主伐・再造林への転換を加速化するとともに、林業事業者への支援や、林業人材の育成・確保に、引き続き積極的に取り組んでまいります。

(地域の林業事業体の生産体制等を考慮した上での素材生産目標の設定について)

議員ご指摘のとおり、地域別に素材生産見通しを積み上げて目標を設定していくという考え方もあり得るというふうに考えておりますが、一方、木材需要は、国内外の情勢に大きく影響を受けることもあり、地域単位でみると供給量が大幅に変動してし まう可能性もございます。地域に素材生産目標を設定する、地域別に積み上げをおこなっていくということについては、一定程度限界があるものというふうに考えております。

このため、この森林づくり指針におきましては、林業経営が可能な森林の資源量を踏まえて、間伐から主伐・再造林への転換や高性能林業機械の導入による生産性の向上のほか、多様な人材の受け入れによる新規就業者の確保等を見込むとともに、需要面を勘案して目標を設定をさせていただいたところでございます。