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9月定例会一般質問(後編)

 さて後段は、今月13日に頂戴した森林議連の研修会での話をベースにしたいと思います。講師をされた宮崎大学の教授によると、宮崎県では今、林業が絶好調とのことで、農林水産省が今年の6月に発表した「令和4年木材統計」によると、同年のスギ素材生産量は、平成3年以降32年連続して日本一。全体の素材生産量で見ても、203万立方メートルは、面積の広い北海道に次いで全国第2位を誇っています。「間伐はもうほぼやっていない。主伐がメインだ」という話があったように、再造林率も現在7割ほど。8割達成を目指してやっているとのことでしたから、長野県からすると、なんだか隔世の感を覚えるような話で、まさに長野県が目指す「林業県」の一つの姿なのでしょうが、その裏の事情もしっかり念頭におく必要があるように感じました。というのは、例えばなぜこれほど林業が活況を呈するようになったのか、「要素はいくつか考えられるものの、その確かなきっかけは私にも分からない」という教授の言葉にあったように、これをやれば林業は成長する、ということはなくとも、着実に環境を整えていった先に、ある時トリガーを引いたように急に伸び基調を迎え始めるならば、それによって次々と噴出してきた課題は、相手が自然という時間のかかる事象であるが故に、すぐには取り戻せないリスクが多数あるようです。例えば、実は宮崎県のいくつかの流域では既に過伐気味で、供給を十分に制御できておらず、このままでは50年先に資源不足に陥る地域がある、とのことでした。再造林率7割という高い数字を裏返せば、それくらいは確保しないと持続可能性が担保されない、差し迫った事情があるとも読み取れ、特に再造林率3割代の市町村にとっては途端に資源の枯渇に見舞われ兼ねません。

 そこで林務部長には、長野県全体の再造林率について、現在の状況と、目標値をご開示頂き、いま基本的には市町村別のデータは取っていないと承知していますが、それを取る場合にはどのような課題があるのでしょうか、お尋ねします。

 また今回はたまたま再造林を例にとっていますが、持続可能な森林管理を考えたときに、それ以外はどうなっているかも、非常に気になるところです。いくら再造林をしても、森は一度皆伐してしまうと水源涵養機能や炭素貯蔵量、生物多様性の保全機能など、様々な機能が50年ほどは落ち続けてしまうといいますし、成長産業化への本丸である木材収穫量についても、一律の短伐期皆伐を推奨するのではなくて、どのような伐期が収穫量を最大化するのか、ここでも地域別、あるいは樹種別に解像度を上げていく必要があるのでしょうか。というその心は、ここでも研修会を引き合いに出すと、宮崎県では今はもう長伐期か、短伐期か、というような議論はなくて、ほぼ一律に短伐期だとのことで、関係業者は湧いているようですが、その一方でハゲ山がやたらと増えてしまったり、盗伐、つまり膨大な樹木が違法に伐り採られて持ち去られたり。という事件が頻発していると言います。お金にさえなれば良いという森林所有者の姿勢、あるいは地域の森林には全く興味がないという住民の無関心、そういうものが少なからずこういった事象を助長しているならば、時間をかけてでも丁寧に県民の関心を森林に寄せていくべきであって、自然への畏敬や地域の和、世代を超えた営み、といった、日本人が大切にしてきた価値観の上に産業が持続している。そんな姿を具体的に描いて頂きたいと思います。

 そこで最後に、長野県の森林環境に配慮した林業施策には、どのようなものがあるか、それらは成長産業化とどのような関係にあるか、基本的な考えを林務部長に伺った上で、知事におかれては、これまで至る所で使われてきた「森林県から林業県へ」という言葉。産業振興への特化を連想させるその言葉は、大切な何かを置き去りにする側面もあったのではないでしょうか。ぜひ新しい言葉と、ビジョンを、とも思いますが如何か。この点を伺って、今回の一切の質問とします。

【須藤林務部長答弁】

(本県の再造林率について)

本県の再造林率につきましては、令和3年度に令和元年度を対象とした調査を行っており、その結果は、48.9%となっております。

主伐後の更新方法につきましては、自然力を活用した天然更新と、植栽による人工造林、いわゆる再造林がありますが、「長野県森林づくり指針」では、公益的機能の発揮を重視する森林については、天然更新による広葉樹化を目指す場合もあるとしており、一律に再造林率の目標を設定することは困難であります。

なお、林地の生産力が高く、傾斜が比較的緩やかで、林道等からの距離が近い「林業経営に適した森林」においては、将来にわたって森林資源を循環利用できるよう主伐後の確実な再造林を推進することとしております。

(市町村別の再造林率データを算定する場合の課題について)

再造林率は、市町村の管理する伐採届出書類と、県が管理する造林補助事業や保安林許認可の申請書類から、1件ごとの伐採目的等を調べて算出することから、市町村職員を含め調査に多大な労力が必要になってまいります。

また、伐採した翌年度以降に植栽を行う現場があることから、伐採年度と植栽年度にズレが生じるため、これまでの方法では、年度別・市町村別の算出は困難であると考えています。

そこで、地域森林計画策定時の空中写真と森林GISを活用し推定した伐採面積、造林補助事業のデータや林業事業体等からの聞取りなどによる造林面積、この2つを把握することで、5年間の再造林率を市町村単位で推計することは可能と考えており、市町村への情報提供についても検討してまいります。

(環境配慮型の林業促進のための施策と成長産業化との関係について)

「長野県森林づくり指針」におきましては、災害リスクの低減に加え、景観面への影響や周辺環境との調和を図りながら段階的、計画的に主伐・再造林を進めることとしており、取組を推進するに当たり「長野県主伐・再造林推進ガイドライン」を策定し、調達や生産、流通の各段階で環境に配慮した主伐・再造林を推進しております。

ガイドラインでは、例えば環境に配慮した資機材の使用、適地適木を基本とした植栽計画の作成、主伐後の景観の変化のシミュレーションを行うなど環境配慮への取組を推奨しております。

また、ガイドラインに基づく再造林の標準的な経費を全額補助するなど、環境に配慮した施業等に誘導するとともに、林業事業体への普及、指導を進めております。

林業の成長産業化を進めるにあたっては、環境への配慮や地域とともに発展し続ける林業経営を実現することが重要であり、そのためには、ガイドラインに沿った取組を着実に進めることが必要であると考えております。

【阿部知事答弁】

(「森林県から林業県へ」に変わる新たなビジョンの必要性について)

本県の素材生産量あるいは林業就業者1人当たりの木材生産額は、着実に増加してきております。1人当たりの木材生産額は、2016年の462万円から2021年までの5年間で762万円と増加してきております。そういう意味では、「森林県から林業県へ」と着実に歩みが進んでいるものというふうに考えております。しかしながら一方で、 今後主伐・再造林を本格化していかなければいけないということ、また、県産材の需要拡大や安定供給体制の構築といった課題があることから、「森林県から林業県への転換」という旗を降ろすことは現時点では考えておりません。引き続きこの旗を立てて取り組んでいきたいと考えております。

しかしながら一方で、一般の県民の皆さんにとっては、林業県ということではなかなか森林の意義、理解が進まないのではないかというご指摘だと思います。

まさにその通りだと思っておりまして、森林の果たす役割はますます多様化してきておりますし、ますます重要になってきているというふうに考えております。そういう意味では、単に産業面だけで捉えるのではなく、より多面的に考えていくことも大切だと考えております。

この3月「長野県森林づくり指針」を公表いたしましたが、みどりや木といった森の恵みが多くの人々にもたらされているという姿を目指して、森林サービス産業の振興であったり、あるいは開かれた里山づくりといった取組を掲げているところでございます。

今後ともこの木材あるいは林業の振興に力を入れるということとあわせて、この森林資源を活かした取組を進めていきたいと思っております。

より多くの県民の皆様に身近な森林に親しんでいただき、また、森林の重要性を理解していただけるような取組を県としてもこれからもしっかり進めていきたいと考えております。