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教育再生ー義務教育考察編②ー

文部科学省は昨秋「2021年度(令和3年度)児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」を公表した。

それによると2021年度の小中高等におけるいじめの認知件数は61万5,351件と過去最多。ネットいじめ件数は初の2万件超え。

また小中学校における不登校児童生徒数は9年連続で増加し、これまた過去最多。

さらに小中高校から報告のあった自殺した児童生徒数は、前年度比47人減の368人。調査開始以降最多となった前年度から減少したものの、小中学生では増加傾向にあるとのこと。

長野県内も五十歩百歩の状況。

おいおいおい。

どこへゆく亡国の教育体制。

文部科学省は、新型コロナウイルス感染症による生活環境の大きな変化が子供たちの行動等にも大きな影響を与えていると分析。個々の児童生徒の状況に応じた必要な支援を講ずるため、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等の教育相談体制の充実を推進している他、未然防止と早期発見・早期対応の取組みを家庭・学校・地域ぐるみで進めるべく子供たちのSOSを受け止める体制構築を図っている。

とのことだが、コロナ前から増加傾向はあった。教育相談体制の充実、子どもたちのSOSを受け止める体制構築と、これらも長年に渡って聞いてきたような言葉だ。

テキトーにそういう言葉を並べておけば大丈夫と思っているわけではないはずだが、お気楽な姿勢が垣間見えるのは心許ない。もっと別の視点や発想の転換を取り入れるべきではないのか。

いじめや不登校を見過ごしてきた子どもたちは、大きくなったときにハラスメントや社会的不合理を自分事として、当事者意識を持って考えられるだろうか。良い学校をつくることは良い社会をつくることでもある。

ということで1月から長らく続けてきた、フィンランド教育から考察する日本の教育現場シリーズ。最終稿のテーマは正義。「ポジティブ・チェンジャー」は如何に誕生するかについて、焦点を当てていきたい。

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今年の1月に私が訪問したのはシポーンヨエン小中学校。公立の小中一貫校だった。

訪問理由の一つは、昨年私が県議会一般質問で取り上げたキヴァ・コウルという学校プログラムを見聞するため。キヴァとは楽しい、コウルとは学校という意味で、文字通り学校生活を楽しく過ごせるように、いじめ対策として開発されている。

当プログラムの趣旨は、いじめにおける傍観者をなくすこと。国立大学の研究者らがいじめのメカニズムを研究したところ、いじめは加害者と被害者の関係というよりは、加害者が周囲に自らの力を誇示するために、繰り返しいじめをするケースが多かったという。

そこでこれを教室全体の問題と捉えて、授業でも、いじめが起きた際にどう行動したらよいかを学ぶロールプレイングや話し合いをクラス全員がして、いじめられている子に声を掛けることや味方になることの大切さを重ねて学習している。

近年日本の自治体でも導入が進んでいるこのプログラムでは他に、校長や教師、スクールソーシャルワーカーなどの教職員3人以上で構成する「KiVaチーム」が常設され、いじめへの対応にあたる。休み時間には、当番の教員が緑色のベストを着用するように推奨され、どの先生に相談すればいいか、生徒に一目で分かるようにされているという。

実際にキヴァの様子を校長先生から聞いてみて、確かにおおよそ日本で調べた通りの内容でプログラム実践されているようだった。が、驚いたのはプログラムの内容というよりも、キヴァが数あるいじめ対策のうちの一つに過ぎなかったということだ。

いじめ対策と言うにはあまりに狭義かもしれない。キヴァの他にも、児童生徒がいくつかのプログラムを活用したり積極関与したりして、自分たちで生活環境・学習環境を向上させるための仕組みづくりがあった。校長先生曰く、子どもたちが教員と協働で快適な空間をつくっていくことが大事、とのことだ。

いくつか紹介していこう。

(続く)