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「おんせん県おおいた」

○調査テーマ:「おんせん県おおいた」について 

説明者:大分県商工観光労働部観光局観光政策課長 佐藤聡 様

 大分県が掲げる「おんせん県おおいた」の経緯と効果をお話頂いた。同県の観光PRのキャッチフレーズ「おんせん県おおいた」は商標登録されて10年になる。「大分県をもっと魅力のある地域に!」と、旅館組合の方が声を上げたのを契機に、同県では様々な取組みが進められてきた。その歩みは山あり谷ありだったようで、商標登録は2013年11月、風呂桶を模したロゴマークと併せて承認された。当初は「おんせん県」で出願したのだが、それは有名な温泉地である群馬県や北海道などが戸惑いの声を上げることにもなった。特許庁が一度は却下し、「おおいた」を付けて登録にこぎ着けた。

「おんせん県おおいた」はこうして県内への誘客や県産品の販売に活用され、お土産物の箱や名刺などへの使用申請は3千件を超えた。フレーズとロゴマークは大分県に申請すれば無償で使用できるため、そのフレーズを生み出した波及効果は大きいと言える。県観光政策課によると、商標出願中の13年3月から受け付けを始め、今年8月末時点で3086件にのぼる。明確な分類はしていないものの、9割ほどはお土産物や観光関係という。これらのもとに、「大分=温泉」という認識は全国に浸透した。旅行情報誌じゃらんは21年、男女1005人のアンケートに基づく「温泉県イメージランキング」を発表。群馬県や北海道を抑えて大分県が1位に輝いた。ちなみに長野県は豊富な温泉資源を抱えながら、9位に沈む残念極まりない状況にある。

「大分といえば温泉」というイメージが定着した一方、国内からの観光客数は頭打ちとなっているようだ。県観光統計調査によると、国内からの宿泊客は14、15年の年間402万人がピーク。伸びしろの大きいインバウンドをいかに取り込むかが鍵になっている。コロナ明け後の迅速な対応と、温泉に続く新たな魅力づくりが課題に上がっている。

県は温泉に加え、自然環境を生かしたアウトドアツーリズムや食観光の推進を図っている。最近では温泉が湧かない市も「おんせん県なのに温泉が出ない」ことを売りにし、特にサウナの取り組みなどを前面に出して観光誘客を進めている。つまり「おんせん県」の魅力は温泉が出ない地域にもしっかりとプラスの効用をもたらしていると言える。温泉を柱として、プラスアルファを如何に伝えられるか。県全体で魅力発信に取り組むことが重要だろう。

長野県として考えた時には、例えば「そば県」をキャッチフレーズに観光PRを進めたい。ある調査会社が今年春、「そばを食べに行きたい都道府県ランキング」を発表した(投票総数計2044票)。長野県は338票を獲得し、第1位に輝いている。「信州そば」の名でも親しまれるように、昼夜の寒暖差が大きいことから良質なそばが育ちやすい長野県では、古くから各地でそばの栽培が盛んに行われてきた。そのため長野県では、日本三大そばにも数えられる「戸隠そば」をはじめ、辛味のある大根おろしと焼き味噌をつゆに入れて味わう「行者そば」「高遠そば」、つなぎにヤマゴボウの一種である“オヤマボクチ”を使う「富倉そば」「須賀川そば」など、たくさんのご当地そばを抱え、信州文化の背骨を成してきた。

 コメント欄では「戸隠そばはとにかく絶品です」「冬季であろうと季節に関係なくそばの風味が味わえる」などの声が寄せられたようだ。その強みを政策的にも推し進め、観光政策の柱に育てていくことが必要ではないか。

Zaru soba