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教育再生ー幼児教育考察編①ー

長野県では2015年より「信州型自然保育認定制度」をスタートし、親しみやすさを込めて「信州やまほいく」という愛称のもとに普及拡大に取り組んできた。信州の雄大な自然を活かした、特色ある取組みの筆頭だと思う。

令和4年10月現在で認定園は270園を数え、「量的」課題はだいぶ前進してきた。よって最近では「質的」課題を磨いていくことがミッションになっている。

では一体、質の向上とは具体的にどのような姿か。

1月のフィンランド訪問では、自然保育の現場も訪ねた。

私が訪れた園舎は、ヘルシンキ郊外の保育園。公立で、ヘルシンキ市が運営している。園舎にたどり着くと、見慣れない「外国人」の私を、お茶目な笑顔で子どもたちが迎えてくれた。まだ日も上っていない(フィンランドの冬の夜明けは遅い!)暗い空気を、子どもたちが一気に変えてくれた。

しばらく園舎や園庭を見させてもらった後、園児たちとともに森に行かせてもらった。森といっても、園舎から歩いて10分ほどの、自然公園といった方が正確かもしれない場所。園舎が位置する住宅街の一角に、こうした自然の要素が配置されていることはまちづくり的観点からも重要だ。

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フィンランドの自然保育を見させて頂いたのは2回目だったが、園舎や園庭のあり方、自然フィールドでの取組みは、正直いって信州やまほいくとそれほど違いがない。というか、かなり似ていると感じる。

だが、県内との大きな違いを見出すとすれば、例えば行政がインクルーシブ教育を推奨している点はどうだろうか。

現場の先生から「昨秋から、インクルーシブ教育がヘルシンキ市から強く推奨されている」と聞いた時には、「ここでもインクルーシブ教育か!」と思った。インクルーシブ教育については以前、小学校の取組みとして取り上げたが、保育園でもそうだった。

そして自然を活かした教育は特に、子どもたちに「自分にふさわしい環境」を提供しているようだ。先生曰く、発達障害にもタイプが色々あるから、森の中で目を行き届かせるのに苦労することはある。だが例えばADHDの子どもたちにとって森は最適な教育環境になることが多い。とのこと。

一歩一歩踏みしめる土や木々の感覚。

手で確かめる葉っぱの柔らかなザラザラ感。

ふと目の前をかすかな音とともに飛び交う虫たち。

そういった豊富な生物多様性が子どもたちの五感を育む。

森の中は、そういう複雑さと長く続く静寂な時間が両立する特別な空間だと、熱を込めて説明してもらった。

翻って、信州やまほいくがインクルーシブ教育をやっていないのかといえば、実際にはやっている園は多い。だがその多くは現場裁量というか、園の方針というか、信州やまほいくとは別の枠組みで実践されている。そして現場では、そのための人員確保などに悩んでいらっしゃるケースが少なくない。

前述の通り、信州やまほいくの質的向上には期待がかかっている。自然の要素を幼児教育に取り込むことが、科学的にどのような効果を生んでいるのか。随時、エビデンスの実証が待たれる。

と同時に、そのような現代的課題への新たなフレームワークとしても積極的に活用されることを一層望みたい。

信州に生まれてきた時から、すべての子どもたちが平等な教育機会を与えられるために。信州やまほいくというフレームを使って実現可能なことは、まだまだあるはずだ。

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